シンポジウム:数学力低下にどう対応するか
ー高等学校・大学・教員採用の現場からー
2010年7月22日(木): 15:45 〜 18:30
最終更新日: 2010/05/14 13:49
このシンポジウムは,高校と大学が連携して数学教育に関する現状とそれに対する対応に関して意見や情報を交換し,
学生の現状を反映した効果的な数学教育に資するために企画したものです.
九州大学大学院数理学研究院は,九州大学で数学とその関連分野の教育・研究に携わる70余名の教員を構成員とする教員組織で,
学部では全学教育・工学部・理学部数学科,大学院では数理学府・システム情報科学府・システム生命科学府における数学教育を担当しており,
大学入試の数学入試問題作成にも責任を負っています.
数理学研究院ではいわゆる学力低下問題に対処するための基礎データ取得を目的として,
2003年度から8年間に渡り,毎年4月最初の数学の授業時間を使って理系新入生対象の数学基礎学力調査を行ってきました.
特に2006年度からは理系全学科に調査対象を拡大し,1000人規模の調査となっています.
高校数学教科書の基本レベルの調査で,毎年同じ問題を使用した継続調査ですが,
調査結果には意外なほどの正答率の低さと正答率のはっきりとした低下傾向が表れています.
この大学入口での調査結果を踏まえ,高校で数学教育に携わっておられる先生をお招きし,
入口以前の高校数学教育では実際に何が起こっているのか,実態とその対応策を報告していただきます.
また,大学の入口を形成する入学試験は生徒の実態に即した適切な試験になっているでしょうか.
生徒はよくも悪くも大学入試を目標に勉強しますので,あまり簡単では到達度が下がりますし,
大学教育で必要な数学のレベルに関して誤ったメッセージを発することになってしまいます.
しかし,あまり難しくしては数学の到達度を正しく測れずに他の科目で点差がついてしまい,
逆に数学が得意な学生が入学できない可能性すらあります.
そこで,九大の入試問題の分析に豊富な経験をお持ちの先生をお招きし,検討結果を報告していただきます.
さらに大学の出口では,教育実習と教員採用という部分で大学と高校に密接なつながりがありますが,
大抵,大学側は学生を出したら「終わり」で,出口で何が起こっているか把握していません.
そこで,大学の出口の教育実習・教員採用に携わっておられる先生に現場の実態を報告していただくと共に,
大学での数学教育に対する問題提起をしていただきます.
講演の後には,講演者に加えて数理学研究院からも何人かを加えてパネルディスカッションを行い,議論を深めます.
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講演者 |
所属 |
タイトル |
梶原 健司 |
九州大学大学院数理学研究院・教授 |
九州大学新入生数学基礎学力調査2003-2010 |
寺崎 浩徳 |
福岡県立福岡高等学校・教諭・進路指導主事 |
現行課程の生徒の学力について |
下田 浩一 |
福岡県立城南高等学校・主管教諭・進路指導部長 |
昨今の高校生の数学力について |
玉利 博文 |
鹿児島県立鹿児島中央高等学校・教諭・進路指導主任 |
わずかな九州大学入試問題の研究から学んだ授業への展開例とその雑感 |
大貝 聖子 |
私立明治学園・学園主事 |
教育実習・教員採用の実態 |
綿谷 安男 |
九州大学大学院数理学研究院・教授(教務委員:教職課程担当) |
パネラーとして参加 |
原 隆 |
九州大学大学院数理学研究院・教授(教務委員:全学教育担当) |
パネラーとして参加 |
- 講演者: 梶原 健司(九大数理)
- タイトル: 九州大学新入生数学基礎学力調査2003-2010
- 概要: 数理学研究院では2003年度より8年間に渡って理系新入生を対象に数学基礎学力調査を行ってきた.
調査は原則として理系全学科を対象とし,毎年同じ問題を使って4月最初の講義の週に行われている.
調査問題は高校教科書の「問」レベルの基本問題であるので,
調査結果は大学の入口における「基礎学力低下」の深刻な実態の一側面を反映していると考えられ,
数理学研究院においては個々の教員の授業計画や理学部数学科のカリキュラム改革などの基礎データとして活用されてきた.
講演では本調査の結果を述べ,正答率低下の背後で実際に見られている現象やそれに対する対処についても報告する.
- 講演者: 寺崎 浩徳(福岡高校)
- タイトル:現行課程の生徒の学力について
- 概要:
現行課程(ゆとり教育)の生徒の学力低下については指導が難しくなったと感じながらも客観的なデータがほとんどなかった.
進路指導部で模擬試験の成績を集約したとき,ある程度明確に学力低下が現れている事がわかってきた.
その模試のデータや本校を取り巻く教育環境の中での様々な参考意見も交えながら,
現行課程における生徒の学力の現状と指導の困難性について述べたい.
- 講演者: 下田 浩一(城南高校)
- タイトル:昨今の高校生の数学力について
- 概要:
教職経験29年,昭和57年嘉穂東高校を皮切りに,昭和63年玄界高校,平成13年筑紫高校,
平成17年城南高校の数学教師として勤務するとともに,長年進路指導に携わってきました.
入試数学のみならず授業においても数学に対して生徒が粘り強く取り組む姿勢が年々弱くなってきていることを痛感しています.
それでも大学に合格していく実態に「果たしてこれで良いのか」と暗澹たる思いを抱いています.
当日は昨今感じていることを具体例を通して報告させていただく予定です.
- 講演者: 玉利 博文(鹿児島中央高校)
- タイトル:わずかな九州大学入試問題の研究から学んだ授業への展開例とその雑感
- 概要: 私は,教員になってから(昭和60年以降)毎年購入してきた市販の数学入試問題詳解を参考にして,
いくつかの大学入試の問題の中から,生徒に還元できるものは市販のソフトを利用して,
文章表現を一部変えたりしながら教材化(データベースというようなかっこいいものではありません)してきました。
2009年度入試の九州大学理学部の後期日程の入試問題大問3が昭和62(1987)年度の九州大学理科系入試問題大問2とほとんど一致していることにも気付かされたこともあります。
どの年度であっても九州大学の入試問題は良質な問題が多いと思うので,入試問題を教材化して指導してきた拙い経験を話そうと思います。
- 講演者: 大貝 聖子(明治学園)
- タイトル:教育実習・教員採用の実態
- 概要: 私立の中学,高校の教員採用は各校にとって,
最重要課題のひとつです.各校が独自に試験を行い,採用しています.
我が校では,現在,数学科の専任教員が中高あわせて15名おります.
採用させて頂く側から見た採用試験受験者の昨今の傾向(特に学力)について,
お話させて頂きます.また,教育実習生を受け入れる側から見た実情,問題についてもお話
させて頂き,ともにお考え頂ければと思っています.
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2010年7月22日(木曜日) 会場:数理学研究教育棟 3階大講義室1
15:45-15:50 |
開会のご挨拶 |
金子 昌信(数理学研究院長) |
15:50-16:20 |
九州大学新入生数学基礎学力調査2003-2010 |
梶原 健司(九大数理) |
16:20-16:40 |
現行課程の生徒の学力について |
寺崎 浩徳 (福岡高校) |
16:40-17:00 |
昨今の高校生の数学力について |
下田 浩一 (城南高校) |
17:00-17:10 |
休憩 |
|
17:10-17:30 |
わずかな九州大学入試問題の研究から学んだ授業への展開例とその雑感 |
玉利 博文 (鹿児島中央高校) |
17:30-17:50 |
教員採用・教育実習の実態 |
大貝 聖子 (明治学園) |
17:50-18:00 |
休憩 |
|
18:00-18:30 |
パネルディスカッション |
講演者+綿谷安男,原隆(九大数理) |
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九州大学所属の方は特にシンポジウムの参加申し込みをする必要はありません.ですが,懇親会参加希望の方は下記の要領でお申し込みをお願い致します.
九州大学所属でない方も,当日の飛び入り参加は歓迎致しますが,準備の都合上,
参加ご希望の方は予め申し込みをしていただけると大変助かります.ご協力をよろしくお願い致します.
申し込みは以下の情報をe-mailでお送り下さい.
- 氏名・所属・職名
- 連絡先:住所・電話番号・e-mail
自宅でも勤務先どちらでもよいですが,確実に連絡が取れる連絡先を指定して下さい.
特にメールアドレスは長いメールでも確実に受け取れるアドレスを指定してください.
- 懇親会の参加の希望の有無
シンポジウム終了後に講演者の方々を交えて(多分天神・博多地区まで出て)懇親会を行う予定です.
申し込み先:
メールの件名を「7/22シンポジウム参加希望」とした上で,以上の情報を e-mail で
九州大学大学院数理学研究院 梶原 健司
e-mail: kaji_at_math.kyushu-u.ac.jp (_at_を 半角の@で置き換えて下さい)
までお送り下さい.
申し込み〆切: 2010年7月16日(金)
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天神・博多駅・福岡空港からは基本的に二つの選択肢があります.
- 西鉄バス(九大伊都キャンパス行き)で九大工学部前(終点)下車(大体30分に1本)
- 地下鉄・JR筑肥線(姪浜で連絡,直通電車あり)で「九大学研都市駅」下車,そこから昭和バスで九大工学部前(終点)下車.
(電車,昭和バス両方とも大体15分に1本)
両者とも所要時間はあまり変わらないようですが,後者の方が時間は計算しやすいように思います.
ただ,前者の方が乗り換えがない分,楽です(座れれば!).
電車の出発・到着時間については例えばこちらで検索できます(バスは検索できないようです).
詳細は以下のリンクからどうぞ.
Google map のストリートビューでも伊都キャンパスの散歩ができます.数理棟(図書館)は下の絵で左上の低層の建物です
大きな地図で見る
- 梶原 健司 (九州大学大学院数理学研究院・教授)(委員長)
- 高木 圭介 (福岡県立修猷館高等学校・教諭)
- 辻井 正人 (九州大学大学院数理学研究院・教授)
- 溝口 佳寛 (九州大学大学院数理学研究院・准教授)
- 南川 武 (福岡県教育センター・主任指導主事)
(50音順)
〒819-0395 福岡市西区元岡744 九州大学大学院数理学研究院
梶原 健司
Tel.&Fax: 092-802-4488
E-mail: kaji_at_math.kyushu-u.ac.jp
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